第1話 楽に死ねると思うなよ
ウワーーーー死にたい!
死にたくて死にたくてたまらない!!
ああでもやっとこれで死ねる。
せめて安らかに眠れますように。
「寒い!!!」
クソほど寒いわ!
こんなので死ねるわけないわ!
いや寒さで死にそうだけど!
ここ安楽死用の仮想世界よね!?
快適な環境が用意されてるのよね!?
「なんで雪原なのよーーーー!!!!!」
見渡す限り白、白、白。
草木も生えないほどの冷気。
こんな寒さじゃ凍死しちゃう!
凍死なんて、凍死なんて嫌だ!
来たばかりなのに手が悴むわ全身がガタガタ言うわ意識が遠退くわ……
せめて安らかに眠らせてって、思ったのに!思ったのに!
もうだめだ……理想の死に方なんかできないんだ……結局私なんかゴミみたいにその辺で野垂れ死ぬのがお似合いだったんだ……
「大丈夫?」
あっ幻聴かな……こんなだだっ広い白銀の中に人がいるわけないし
「大丈夫じゃないんだね」
幻聴にしては長いな……
「死ぬの?」
死にたいよ。すっごい死にたいけど、こんな無様なのは嫌だよ。
ふと幻聴の聞こえてくる方向に目線を向ける。
そこには煉瓦のような色の髪と瞳、それに琥珀を溶かしたような褐色の肌。
めっちゃ美形がいる!今、好きになった!!!!!
「結婚しましょう」
気付いたら、私は起き上がって手を差し伸べていた。