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~入学編 その1~

 2050年、VRやARの開発がどんどん加速していき、天才研究者と呼ばれ世界的に有名な五木雄野いつきゆうやが「パワーリング」という新しいデバイスを開発した。このパワーリングは指輪型の小型デバイスで、起動すると現実世界で戦隊ヒーローのように変身できるというものだった。しかし、あまりにも高価なものだったので世の中に普及はしなかった。軍事利用できると考えた政府は、パワーリングを導入した学校を建てることにした。国民は軍事目的であると知りながらも、パワーリングに魅せられていたために、非難する声は少なかったのだ。


 *************************


 俺は西条解理さいじょう かいり、今は14歳だ。


 2050年代になった今も日本には義務教育があり、昔と何も変わっていないらしい。普通の中学校に通う俺は、運動も勉強もでき、その上美的才能にも恵まれていた。なんでもできてしまう俺は学校があまりにも退屈だった。高校はもう少し楽しめたらいいなあ・・・・・・


 家に帰るといつも通り、義理の母である西条有美さいじょう ゆみが夕飯の支度をしてくれていた。


 そう、俺には両親がいないのだ。既に亡くなってしまったらしく本当の両親のことは何も知らない。小さい頃から、この西条家で暮らしている。そのせいか、本当の両親のことを知りたいと思うこともなかった。


 自分の部屋行き、電子端末でニュースを見ながら夕飯ができるのを待つ。


 「お兄ちゃん、ご飯できたってよ」


 二歳下の妹である彩科さいかが俺を呼びに来た。

 適当に返事をして、リビングへと向かった。


 今日は3人で夕食を食べながら、雑談をしていた。


 「解理、高校はどこ行くか決めたの?」


 「うーん、まだ決めてない」


 「そうなのね。この前ニュースで面白そうな学校ができるらしいわよ」


 「面白そうな学校?できるってことは新設?」


 「そうよ、今入学希望者を集めているらしいわ」


 「ふーん、なんていう学校?」


 「PRアカデミーってところよ」

 

 PRアカデミーは政府が建てた「パワーリング」を専門に扱う高校である。


 「ああ。それさ、もう東京と大阪にあったよね。新しくできるってどういうこと?」


 「地方にね、支部の学校を建てるらしいわ。」


 「そっか、あとで調べてみる」


 ちょうど夕飯も食べ終わったところだった。


 「ごちそうさま」


 そう言って俺は、自分の部屋へ向かった。かなり高揚していた。もともとパワーリングには興味があった。しかし、俺が住む地方からはアカデミーが遠すぎて入学が困難だったのだ。


 『PRアカデミー 支部』ーー検索すると、今日政府が発表したという記事が出てきた。


 なんで夕飯前に気づかなかったんだよ・・・・・・。まあ、いいや。


 とにかく、記事を読む。


 どうやらPRアカデミーの支部は5つできるらしい。現在あるのが、東京本部と大阪本部。来年からできるのが北海道支部、東北支部、中部支部、中国四国支部、九州支部。


 東北支部がある。東北地方に住む俺は、ここに入学することが可能だ。これでパワーリングをつける機会が得られる。


 「いいいぃぃよっっしゃああああああああ!!」


 あまりの嬉しさに俺はガッツポーズをしながら叫んだ。たぶん、母と妹は驚いているだろうな。普段感情をあまり表に出さないからな。まあ、そんなことは関係ない。


 これで俺の進路は決まった。あとは受験に向けて勉強するのみだ。今まであまり乗り気ではなかった受験勉強が一気に楽しくなった。正直、勉強なんてしなくても余裕で合格できそうな気がしないでもないが。



 *************************


 そして、受験当日。


 受験者数は5000人を超えた。入学できるのはそのうちの200人のみ。


 筆記試験は国語100点、数学100点、理科100点の300点満点である。そして、実践試験が300点満点で行われる。実践試験では、実際にパワーリングを装着して何かをするらしいが詳しいことは何も公開されていない。こればかりは対策ができない。パワーリングを持っている家庭はほぼないと言っても過言ではない。つまり、受験者の多くが初めてパワーリングを使用するのだ。うまく適応できた人が合格できるのだ。


 午前中は筆記試験のみだ。これはしっかりと勉強してきたので、俺はほぼ満点だろうというくらいの手応えを感じながら解き終えた。おそらく、午前の試験では差がつかないだろう。


 昼休憩を挟み、実践試験が始まった。最初はパワーリングの適性を見る検査をした。パワーリングが体に合わない人も存在する。その人達はパワーリングをつけると体調不良になってしまうのだ。この検査で約100人くらいの人が、入学拒否という形になり、受験資格が剥奪された。


 次にパワーリング装着時のステータスと呼ばれるものを検査した。パワーリングには属性、武器、ユニークスキル、階級レベルタイプと呼ばれる主な指標がある。


 属性は4元素である『火、風、水、土』と『無』の5つの属性が基本となっている。たとえば、雷(火属性)、氷(水属性)のように自然属性は4つのどれかから派生しているのだ。無属性は聖(無属性)のように自然属性以外のものの派生元される。


 武器はパワーリング起動時に自動装備される武器のことである。刀や短剣、大剣、弓、斧、銃など人によって様々存在する。


 ユニークスキルは様々存在するため説明が難しい。たとえば、『火属性耐性』とか『風属性強化』とか本当にいろいろあるらしい。最初から保持していたり、突然獲得したりする。保持に上限はないと言われている。


 階級はよくレベルと呼ばれている。1~7まで存在し、単純に強さを表す。初めてパワーリングを装備したときに、レベルが決まる。それ以降、努力すればレベルがあがる可能性はあるが、ほとんどの人はレベルが変わらない。つまり、最初が肝心である。というか、もはや才能。


 型はタイプと呼ばれるもので、攻撃型、防御型、敏捷型、支援型の4つがある。これによって自分の戦い方が決まるのだ。


 いよいよ、俺の検査の順番が来た。とても楽しみだった。あらゆる才能に恵まれている俺のステータスはどうなるのか、いろいろな妄想を膨らませた。


 検査が終わり、自分の電子端末に結果が表示される。


  属性      : 風(風属性)

  武器      : 双剣

  ユニークスキル : なし

  階級      : 1

  型       : 敏捷型


 俺はなんどもなんども見直す。目をこする。頬をつねる。何をしても結果は変わらない。何かの間違いだ。絶対おかしい。俺はこの結果を全く受け入れることができなかった。何も考えることができなくなった俺はスタッフに誘導され、受験者の控え室へと向かった。


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