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2話
「子供じゃないんですから。それに、たまには1人で気楽に過ごしてますよ」
むつは頂きますと言ってからスプーンを持つと、二男である諒の顔を思い浮かべてみた。正月を一緒に過ごした諒は、4人の兄の中でもちょっとタイプの違う、知性派といった感じで物静かで淡々としているようでもある。そんな兄が、キッチンに立つのを想像して、むつはふっと笑った。
1人で笑っている事が恥ずかしくなったのか、誤魔化すようにふわっとした卵をふーっふーっと冷ましてから、口に運んだ。しっかりと出汁がきいていて、物足りさは感じない。
「…美味しい」
「お正月の時もあまり食が進んでなかったみたいですしね。食欲ない時には、お粥さんの方が食べやすいでしょ?」
「バレてたんだ?」
「えぇ。体調悪いわけでもなさそうなのに…無理なダイエットは身体に悪いから辞めなさいね」
「そんなんじゃないよ…ダイエットの時は運動するもん。ただ、ちょっと食欲ないかも…色々あってから」




