96/1084
2話
父親と晃の愚痴で、まさかの盛り上がりを見せていた母親と冬四郎を残して、先に眠ったむつは、もぞっと身動ぎをして起きた。夜中に母親がベッドに潜り込み、布団で寝ていたむつの隣で冬四郎が、寝袋に渋々入ったのは分かっていた。だが、今起きてみるとすでにベッドには誰も居ない。みのむしのようにまるまっている冬四郎は、隣でくぅくぅと寝息を立てている。
だいぶ呑んでるのか、かすかにアルコールの臭いがしている。爽やかな目覚めを台無しにしてくれる兄を睨みつつ、起こさないようにと、むつはそうっと部屋から出た。
キッチンには母親が立っていて、しゅんしゅんと鍋から湯気が立っている。昨夜は遅かったはずなのに、すでに起きて家事をしている母親を、むつは素直に凄いと思っていた。
「おはよう。早いわね」
「おはようございます…お母さんも早いね。昨日、遅かったんじゃないの?」
「そう、ねぇ…3時頃だったかしら?冬四郎さんはまだ寝てるのね?」
「うん。休みだし、寝かせておいてあげよ」
母親は頷くと冷蔵庫を開けて、冬四郎さんの冷蔵庫より物が少ないわねと呟いている。




