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2話
むつが出してきた胡麻煎餅を半分に割り、1/4サイズにしてから口に入れている母親は、それをあてにビールを呑んでいる。正月には、新年の挨拶と共に少しだけ日本酒を呑んではいたが、そこうして一緒に酒を呑むのは初めてなむつは、それが新鮮でそれだけで楽しいと思っていた。
「それで、むつはどうするの?お父さんからのお話」
「え…うん…どうしよっかなって思ってる。そりゃあさ、内緒で話が進んでて断ったら相手の…酒井さんだっけ?に失礼だと思うし、お父さんといにちぃの顔に泥を塗る事にもなるし」
「そんな事を気にしてるの?いいのよ、気にしなくて。全く、うちの男たちは勝手なんですから」
「勝手だよね。本当にそう思う!!」
ぐびぐびとビールを飲み干したむつと母親は、やけ酒かと思うように手酌でビールを継ぎ足すと、あっという間に飲み干した。冬四郎は、それを見ながら2人のペースに合わせてはいけないと、ちびちびと呑んでいた。




