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2話
何でもないように、さらっと母親が言うと、炒飯を喉につまらせたのかむぐっと変な声が聞こえてきた。それは、むつの物であり、余り物の野菜で作った即席のスープをごくごくと飲んだ。
「おっ…お母さんは…」
「むつの能力の事はちゃんと知ってるわよ?むつが言わないから、私も聞かないけど。子供の頃は大変でしたから、ねぇ冬四郎さん」
「泣くたびに、火の手が上がってたから…常に家の中で火事だったからな」
「そ、そうなの…?知らなかった。だから、お母さんも知らないんじゃないかなって思ってて…」
「隠してたつもりなのね?でも、お父さんからもお兄さんたちからも聞いてるわよ。どちらにしても、無理に聞くつもりはありませんよ。でも、そうね…そうよね」
何がそうなのか分からないが、母親はどこか遠くを見るようにして、呟いていた。それが何を見ているのか分からないもは、むつだけだった。冬四郎は、母親が玉奥の家の夫妻を思い出しているといつのは、何となく想像が出来ていた。




