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2話
タッパーの中身を皿に盛り、レンジで温めて簡単な夕飯の支度を整えると、3人は揃ってテーブルについた。
「今夜は何だか楽しいわ。冬四郎さんの作った炒飯にむつの作った煮物やおひたしが並んで…たまにはいいわね。子供たちが作った物っていうのも」
料理好きな母親の口に合うような物かと、むつも冬四郎も緊張しているようで、なかなか端を持てずにいる。母親は、それを気にもしていないのか、取り皿に煮物などを乗せると、口に運んでいる。
「2人ともどうしたの?」
母親の口元を食い入るように見ていた、むつと冬四郎は、顔を見合わせると何とも言えない顔をした。
「食べれそう、かなって…お母さんの料理には敵わないからさ」
「俺も…適当に作ったどころか八つ当たり気味に作ったから味がどうかと思って」
「…あら?味の事が不安なのね。大丈夫よ。2人が作ったっていうだけで、新鮮ですもの」
新鮮ではあっても美味しいとは言わない辺り、母親からの及第点を貰えるような出来では、ないという事だった。




