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2話
晃と父親を追い出すようにして、玄関まで見送ったむつは、ぱたんっとドアを閉めて鍵をかけた。
「それで…冬四郎さんは、お夕飯の支度をしてくれてたの?」
「え、あぁ…あの2人を部屋に押し込んでからやる事も無かったから…一応は」
「あら、そうなのね。冬四郎さん少しはお料理してるのね。良かったわ」
母親はにこにこと笑みを浮かべると、キッチンに入っていく。そして、フライパンの中身を見たり、冷蔵庫を開けたりして中身のチェックをしている。
「まぁ…煮物まで。あなた、いつの間にかこんなに料理出来るようになっていたのね」
冬四郎の部屋にほとんど来た事がない母親は、あちこちと見て回っている。そのたびに、驚いたり感心したりと忙しい。
「お兄ちゃんってば…何も出来ないと思われてる?お母さーんっ煮物はあたしが作ったんだってば」
「あらそうなの?なら大丈夫ね」
「大丈夫ってどういう意味なんだよ」
がっくりしているような冬四郎を横目に、むつは母親の隣に並んで冷蔵庫から一昨日の夕飯の残りのタッパーを取り出している。




