2話
「…そうか。なら、冬四郎に任せておくか」
「そうですとも。冬四郎さんが居ますからね、むつもその方が安心出来るでしょうから。さ、晃さんも一緒にそろそろ出ていきなさい」
母親はもう父親の顔も見ていたくないとでも言いたげに、晃にもさっさと出ていけと言っている。優しげな声ではあるが、うむを言わせない雰囲気からして、まだ機嫌は直っていないようにしか見えない。
晃もそれを分かっているからか、父親を促した。これ以上は、ここに居ても仕方ないと分かってか、父親はちらちらとむつを気にしながらも帰り支度を始めている。それを横目に、冬四郎はあからさまにほっとしていた。
「じゃあ、むつ…何かまたあったらすぐに言いなさい。冬四郎でも俺でもいいからな」
「…いちにぃには言わない。しろにぃはあたしの味方になってくれるって言ってたもん」
「謝ってもダメか?」
「ダメっ‼早く帰って‼むつは、しろにぃのご飯食べてゆっくりしたいんだから」
止めのようなむつの言葉といい、背中を押されて追い出されるかっこうになるといい、晃にとっては散々となっていたが、母親と冬四郎は揃って笑みを浮かべていた。




