2話
「…ってかさ、しろにぃが連絡したからお母さん来たの?早すぎない?」
冬四郎にいれて貰ったコーヒーをすすりながら、むつは何でという顔をしている。晃もそれは気になっていたのか、冬四郎の方を見た。冬四郎は、そんな晃からの視線は、あからさまに鬱陶しいと言わんばかりの顔をしている。長男と四男の仲があまりよくないのは、今に始まった事ではないが、今は尚更のようだった。
「親父が前から見合いの事は言ってたらしいんだ。ついでに、兄貴の所に相手の人から挨拶があったのも…兄貴は親父に言ったんだろ?」
「あぁ…俺もその時までは知らなかったからな。突然、事前に連絡もなく訪ねてこられて驚いたしな。それで親父に確認を取るのに連絡して、それで見合いの事を聞いたんだ」
「いちにぃ最初から知ってたわけじゃないんだ?お父さんから聞いてて、お父さん側についたのかと思ってた」
「いや、酒井さんがいらして初めて知ったんだ。親父と酒井さんの付き合いの事も、父親がむつをどうかって言った事もな」
「ふーん?酒井さんっていう人なんだ?しろにぃ知ってる人?」
ここにきて、ようやく相手の名前が分かりむつは、同じ仕事をしている冬四郎に聞いてみたが、冬四郎は首を振るだけだった。同じ組織内とは言えど、全員を把握する事など無理な話なのでそれは仕方ないか、とむつは思っていた。




