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2話
ダイニングに追い出された3人は、心配そうに部屋の方を見ている。だが、ドアを挟んでいるからか、部屋の様子は分からない。分かるのは、不穏な雰囲気が漂っているというだけだった。
「…喧嘩になるぞ」
冬四郎はぼそっと呟くと、心配そうにしているむつと呆然と突っ立っている晃を、引っ張ってドアから離した。
「兄貴がくっついて来るから。親父だけなら、まだしも…」
責めるように言うと、晃はうなだれて見せたが、冬四郎はそれで許してやろうという気にはなれない。
「もう…しろにぃ、やめなよ。でも喧嘩になるかなぁ?あたしがお見合いしたら丸く収まる?」
「収まるはずないだろ。母さんは見合いをさせたくないんだ。それなのに、お前が親父の肩を持ってみろ…」
「お母さん不機嫌になるね」
3人がドアから離れたと分かってか、母親の静かな声が聞こえてきた。5人もの子供を育て、背中にも目があるような母親の事だ。子供たちが、ドアから離れる事も気配で察したのだろう。それでも抑えられた声からは、何を言っているかまでは分からなかった。




