2話
母親には四男が、父親には長男がという構造になり、むつはきょとんっとしている。自分の事が元になり、兄弟と両親が対立し合っているのは初めて見る光景だった。
「も、勿論むつの事を考えて…」
「いいえ。晃さんはお相手の方がどういう方がご存知で、お断りしにくいからですよね?お仕事の事もありますし。そうなると、晃さん。むつの為、お父さんが持ってきた話の為、ではなくご自身の為なのではありませんか?」
「………」
当たらずとも遠からず、そんな節もあったのか晃は黙り混んでしまった。やれやれと言いたげに、母親は溜め息を漏らした。さして、膝を折ってしゃがむとむつを立たせて冬四郎の方に押しやった。動作としては優しげではあるが、有無を言わせない感じにむつは、どうしようと冬四郎を見たが、冬四郎は肩をすくめて見せるだけだった。
「冬四郎さん、むつをお願いしますね」
「あ、はい」
「晃さん、部屋から出なさい。お母さんは、お父さんと話をしなくてはいけませんので」
晃は子供のように頷くと、父親の顔を見ただけでなにも言わずに立ち上がると部屋から出た。子供たちが部屋から出ると、母親は静かにドアを閉めた。




