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2話
「その…母さん…む、むつも年頃だしそろそろ結婚も意識してくれたらと思ってですね。相手の方は、むつを気にしてくれてますし…」
「相手の方、相手の方って晃さんは誰の為にお見合いをと言ってるのかしら?」
「それは、むつの為にと…」
「でしたら、何故むつに話す前にお見合いの話を進めているんです?日にちまで決めてるようですけど」
「何で、それ…あ…」
母親が凛とした佇まいでいる後ろから、冬四郎が顔を出している。むつは冬四郎が、自分と母親は味方だと言ってくれていた意味がここに来て分かると、尚更に嬉しそうな顔をした。
「俺が母さんに伝えておいた。父さんが家を出たから、こっちに来るかもっていうのは母さんから聞いてたからな。それで、父さんと兄さんから聞いた話を母さんにも伝えといたんだ。な、むつ。俺と母さんは味方だって言ったろ?」
冬四郎は壁に寄り掛かるようにして、むつにはにっこりと笑みを浮かべているが、それもどことなく怖い。




