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2話
「…お父さんとお兄ちゃんは、お見合いする方向で話を進めてるみたいね」
はぁとむつが溜め息混じりに呟いて、晃と父親の方をじろっと睨むように見た。どきり、としたのか父親と晃は顔を見合わせて、気まずそうにしている。
「お兄ちゃんの所に、その方がご挨拶に来たって事は、そういう事なんでしょ?それに、来てくださった…って言い方…お兄ちゃんよりも階級が上なの?でも、しろにぃと年が近い…凄いね。キャリアってやつの人?」
「…むつは言葉のはしはしから情報を掴むよな。言い方、声の調子からでも分かるみたいで、お前本当に刑事向きだよ。山上さんが言ってたのも納得だ」
「納得なんてしなくていい。日本語のいい所は、言い方1つでかなり意味合いが変わってくる所よね。敬語に謙譲語にって色々あって素晴らしいわ。それに、それをちゃんと使うお兄ちゃんは好き」
落ち着いた様子でむつが言うと、晃は笑みを浮かべた。それは、妹大好きの兄が、でれでれと浮かべる笑みではなく、仕事の出来た部下を労る時のような笑みだった。




