2話
「…むつ、お相手の方は晃と冬四郎と同じ仕事をしている方でな、年は冬四郎と同い年か1、2歳違うだけなんだ」
「あまり、はっきり分かってないような言い方をするんですね。お見合いなら、お写真とかありますよね?見せて頂けますか?」
「写真はない。見合いと言っても仲人が居るわせでもないんだ。お父さんが知り合った方だからな…」
自分の知り合いだというのに気が引けたのか、父親は少し言いにくそうに言った。むつのぴくっとひきつるように痙攣したのを見逃さなかったのか、父親はすまなそうな顔をしている。
「よく呑み行く所でだな、知り合った方なんだ。何度も一緒に呑むうちに仲良くなって、色々な事を話していた時に年頃の娘がいるって言ってだな。その正月に帰省した時のむつの写真を見せたら、えらく気になってくれたようで、むつと会いたいと言ってくださったんだ。だから、どうだ?相手の方は、いい方だぞ」
「そうだな。その方はな、同業っていうのもあって俺のところにもわざわざ挨拶に来てくださったんだよ」
父親と晃の話、特に晃の言葉に何か引っ掛かる物でも見付けたのか、むつは目を細めている。すでに完全に、落ち着きを取り戻しているようだった。




