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2話
強気だったむつが急に不安がるように表情を曇らせると、晃がのっそりと立ち上がりむつの隣に腰を下ろした。
「むつ、どんな話だと思ってるんだ?」
「…前に養子離縁の事言ったし、それかなって」
「あぁ…そんな事、言ってた時もあったな。それは…今でもそうしたいって思ってるのか?」
親が口を出せば、むつが遠慮して言いたい事も言えなくなると思ってなのか、父親は耳を傾けてはいるが、何も気にしていない風に冬四郎の使っている寝室を見回している。
「思ってない…うん、でも…かなぁ?分かんないかも。玉奥の家も大切にしたい。でも、お兄ちゃんたちと離れるのもやだし」
「そうだな。玉奥の家はむつしか居ないからな…でも、むつ…玉奥の名前を残していくには、お前婿を取るしかないんだぞ?それには相手も必要だし…まぁ玉奥の血筋をって言い方も変だけど、残していきたいなら、どっちにしても相手は必要になるからな…それで、だな…どうかな?」
何がどうだというのか、むつは分からないという顔をして晃を見た。晃は、珍しくも悩むように視線をさ迷わせている。
「見合いとか…してみないか?」




