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2話
「むつは…普通に仕事だもん、ばか」
「ばかは余計だ。何なら、山上さんに頼んで休みにさせて貰おうか?」
「いい…行ってきます」
「いってらっしゃい」
にっとりと笑みを浮かべる冬四郎に背中を押され、むつはとことこと部屋の前まで行くと、大きく深呼吸をすると、きゅっと唇を引き結んだ。 そして、ノックもせずに勢いよくドアを開けた。
「…お?あっ‼むつ‼」
「あぁ、むつ。冬四郎から連絡でも貰ったのか?お前に話があって来てたんだよ」
驚いたような顔をしている晃と、どこか困ったような笑みを浮かべる父親を交互に見たむつは、こくっと頷いて部屋に入ると、ぱたんっとドアを閉めた。ちらっとキッチンの方を見ると、心配そうな冬四郎の顔が少し見えると、ますます不安になった。
「話って何ですか?」
「あぁ…」
「まぁ、むつ座りなさい。そんな立ったままじゃ、ゆっくり話も出来ない」
「いいお話じゃないなら、ゆっくり聞きたくありません」
むつが挑むように2人を睨んで、きっぱりと言うと、父親は珍しくしょんぼりとした様子を見せた。




