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2話
そんなむつに気付いているのか、冬四郎は表情をゆるめた。ほとんど吸わないうちに灰が長くなったタバコを、流しに投げ捨てた冬四郎は、むつの頭に手を置いた。
「俺の為にも…さっさと話を聞いておいで。で、追い払ってきてくれるか?そしたら飯にしよう」
「…えーもぅやだ。一緒に」
「何回も聞きたくない。ほら、行け」
しっしと追い払うように手を払われたむつは、しょんぼりとしつつもドアの閉められている部屋の方を見た。晃と父親からの話が、気にならないわけではないが出来れば聞きたくない。そんな感じだった。
「…明日の休みは1日何でも言う事聞いてやるから。頼むから、さっさと追い返してくれ」
冬四郎からの申し出に、むつはきょとんっとしたように顔を上げた。冬四郎が貴重な休みを、自分の為に使ってくれるというのは、かなり魅力的な申し出だった。だが、そうまでして実の兄と父親を追い返したいのかと思うと、部屋に居る2人が少し可哀想にも思えた。




