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2話
冬四郎が不機嫌な理由が何となく分かったむつは、少し嫌な顔をした。自分に用事があって、その話の内容を冬四郎はすでに聞いているという。
「…嫌な事?」
「お前次第だな。俺は…うん、何だよそれって感じがしたけどな。母さんも反対したらしい」
「お母さんから連絡あったの?」
「俺がした。母さん、まぁまぁ怒ってたな」
当然だな、と言いたげな冬四郎は嘲笑うかのように、フライパンを見下ろしている。むつは、そんな冬四郎の手元をちらっと見て、あぁと思ったが何も言わない。
「…嫌な予感しかしない。お父さんもお母さんも関係しててってなると…家の事?」
血の繋がりはないむつは、自分が関係してて家の事となると逃げ出したくなるようで、泣きそうな顔をしている。
「大丈夫だ。俺も母さんもお前の味方だからな…親父も兄貴も、まったく…」
子供の頃、1番長く過ごした冬四郎と母親が味方になってくれるなら、それ以上に心強い事はない。だが、晃と父親が揃っている場に行くのは嫌なようで、むつは冬四郎の側を離れようとはしない。




