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1話
「人じゃないがな。所で、むつ…よく僕が居るのに気付いたな。気配隠しきれてないか?」
「うん?んー?まぁそうかな…何となく、あれ?って思っただけだけど」
「そうか。むつが近付いてきたの分かったから、顔を伏せていたのに」
火車の方が先に気付いて、気付かれないようにしていたのだと分かると、むつは少し困ったような笑みを浮かべた。
「…気付かれて迷惑なんじゃないぞ」
むつの考えを先読みするように、ぼそっと火車が言うと、むつは首を傾げた。気を遣われているのかと、むつは申し訳ない気持ちになっていた。火車は、もごもごと口を動かして、さらなるフォローの為か言葉を探している様子だった。
「気まずいだろ?妖のくせに買い物なんて」
「…え?そう?そんな事ないと思うけど。だって必要な物とかあるでしょ?」
「僕には必要な物はない。人の社会に居るわけじゃないからな…たまに、小僧の寺で菓子は頂戴してるしな」