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2話
フライパン片手の冬四郎をまじまじと観察してたむつは、冬四郎がどこか機嫌悪そうな事に気付いた。寝不足で当直明けで、という事かと思うとむつは申し訳ない気持ちになった。寝袋と鞄を置いて、キッチンで手を洗うと冬四郎を手伝おうと隣に立った。そんなむつを見て、冬四郎はむつの頭をやや乱暴にくしゃっと撫でた。
「…親父と兄貴来てる。挨拶してこい」
「え?お兄ちゃんの部屋に居るの?」
「あぁ。鬱陶しいから部屋に押し込んで俺は夕飯の支度をだな…お前に用があるんだと」
「でも、あたしの所に連絡ないよ?」
冬四郎がわざとらしく、がちゃがちゃとフライパンの中身を木ベラで混ぜながら、ぼそぼそと低い声で呟くからか、むつも小さな声になっている。
「…何にもしてないし」
「怒られるわけじゃない。用件聞いてこい」
「お兄ちゃんは?知ってるの?」
「あぁ、聞いた」




