54/1084
1話
「…どお?」
「居ないっすね。マンションには、ちらほら居ましたけど…この部屋には居ませんよ」
「ですが…何か近くに居ますね」
「えっ?」
むつと祐斗が揃って京井の方を向くと、京井は気難しい表情をしていた。
「…むぅちゃんのストーカーって事でしょうか。むぅちゃんの自宅に残ってた感じと同じでしょうね」
「遥和さんってそういうの分かるの?」
「分かりますよ。むぅちゃんも好調の時は分かるんじゃありませんか?その場に何かが留まっていて、移動したとしても残留物のような物がある事に」
悩むように首を傾げているばかりで、むつは何とも答えない。そんな経験、今までにあったかな、と思い起こしているようだった。
「無意識のうちかもしれませんね」
京井はくすっと笑ったが、また険しい表情に戻っていた。そして、首を傾げながらむつの顔を真剣に見ていた。




