1話
だが、祐斗の不安をよそに、むつは慎重なくらいに安全運転だった。山上と京井も、乗せているからという事なのだろうか。助手席に収まっている祐斗は、むつが運転する車には初めて乗ったがそこまで心配する事はなかったなと感じていた。バイクの時もこのくらい安全運転をして欲しいと言いそうになったが、そこはぐっと堪えておいた。
3人が運転に対して、心配やら不安やらを抱えていたなど知りもしないむつは、慣れた様子で近くのコインパーキングに車を停めた。
「むつさんのマンションっていいですよね。隣との距離が空いてるから、生活音とか気にならないですよね」
「そうなんだよね。1人で住むにはいいよ。学生の頃じゃ、1LDKに住むのは夢のまた夢だったけど」
「そうなんですよね…俺も社会人になったら、そうしたいです。京井さんみたいに社長になったら、豪邸とかに住めそうですけど」
「いえ、私は1LDKですよ」
「えぇっ!?何か社長ってなると、無駄に広い所に住んでるイメージが…お手伝いさんとか居て」
「私だけが、ゆっくりする場所ですから…広さは必要ないですし。お手伝いさんなんて、雇ったら気が休まる時なくなっちゃいますよ」
京井の正体が実は犬神だという妖だと知っている、3人はそれもそうかと納得していた。




