1話
「じゃあ、視に行きましょうか。あ、俺もしかして宮前さんの家って初めて行く気がします」
「あ、そうなんですか?私はありますよ」
「俺も」
「えっ!?何で京井さんが…」
何でと聞かれると、京井は笑みを浮かべて首を傾げるだけで何も答えなかった。むつも少し意外そうな顔をしていたが、京井が冬四郎の家に行ったのはむつが誘拐された事が元となっている事は、京井は言わなかった。
「ま、俺も暇だし行くかな。むつ運転しろ」
「はーいっ」
遊びに行くわけでもないのに、むつは皆で行くというのが嬉しいのか、うきうきとした様子でパーカーを着ると会社の車の鍵を持つと、車取ってくると先に出ていった。
「…本当にむぅちゃんに運転させるつもりですか?」
「勿論。あいつが呼び出したんだからな。これで、俺か京井さんが運転するなんて言えば、あいつ気にするだろ?変な所で気にしいだならな」
「確かにそうかもしれませんが…」
「大丈夫だろ、たぶん」
「その、たぶんが怖いですけど…まぁ仕事とかじゃないですもんね。普通に運転するだけなら大丈夫ですよね」
祐斗も不安なのか、何度となく自分に言い聞かせるように、大丈夫、大丈夫と呟いていた。




