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1話
霊視というなら祐斗にして貰うというのは分かるが、京井は何の為にかと山上が気にしていると分かってか、むつはキーボードを叩く手を止めた。
「…2人が来るのを待つなら説明するよ。もうすぐ来ると思うよ?連絡あったし」
「何かあったんだな…」
「ちょこっと、ね」
もう仕事を再開させる気にはなれないのか、むつはマウスを動かしてパソコンの電源も切った。そして、立ち上がるとコーヒーをいれ直しにキッチンに入っていった。
そんなむつとは入れ違うように、廊下から足音が聞こえてきてドアが開いた。ひょこっと顔を出した青年は、誰かを探すように事務所を見回した。
「あ、社長。お疲れ様です。むつさんは?」
「お疲れさん。奥でコーヒーいれてる」
「そうですか」
とことこと入ってきたアルバイトの祐斗はドアを閉めようとしたが、ドアはがっちり固定されたように動かない。
「こんばんは。お邪魔します」
「うわっ‼きょ、京井さん」
振り向こうとして上から声が聞こえてきて、驚いたような祐斗はぱっとドアから手を離した。




