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1話
むつは気持ちを切り替えたのか、今日の予定である仕事を片付けると、かたかたとキーボードを叩いて、事務処理もしていく。時おり、壁にかけてある時計を見ては時間を気にしているようだった。
だんだんと暗くなってくると、山上は目を通していた書類から顔をあげた。目を通すといっても、むつと颯介がしっかりしているから、確認する必要もないような気がしていた。むつは無表情にパソコンの画面を見ながら、キーボードを打っている。
「むつ、そろそろ終わるか?」
「ん、先に帰っていいよ。あたしはここで待ち合わせ」
画面から顔も上げずにむつが言うと、山上は驚いたような顔をした。事務所に誰か来るというのに、それは一言も聞いていなかったのだ。
「誰と?」
「祐斗と遥和さん」
祐斗はアルバイトでもあるから、来るのはまだ分からなくもない。だが、遥和さんと呼ばれている者は、付き合いはあっても関係者ではない。
「何でだ?」
「あたしが呼んだから。霊視して貰う」




