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1話
むつは、寝起きでぼんやりしているような冬四郎を追い立てるようにして、顔を洗ってこさせると、味噌汁をついで炊きたてのご飯をよそった。
「…朝から飯が食えるっていいな」
「いつもどうしてるの?」
「コンビニでゼリータイプの買ったりだな。休みの時は別にいらないし」
「朝はちゃんと食べなきゃダメでしょ?頭も身体も使う仕事してるのに」
「むつ、意外と口うるさいよな」
「うるさいわよ‼」
しっかりしているというか、こういう時だけは世話好きになるのか、むつがあれこれとしてくれるのに冬四郎は甘えて、ゆっくり朝食を食べた。
「あ、むつ。言うの忘れてたんだけどな、俺今日は当直なんだよ…帰って来れないけど大丈夫か?」
「え…そうなんだ…うん、まぁ大丈夫」
寂しそうな顔をしたむつだったが、すぐに笑みを浮かべた。それが心細そうで冬四郎は心配になったが、何か起きたわけでもないのに、仕事を休むわけにはいかなかった。




