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7話
戻ってきたむつは、首から職員証を首からぶら下げていた。そして、それをつまんで冬四郎に見せた。
「藤原が貸してくれた。これで、ロック解除出来るからって」
「そうか。出るぞ」
しんと静まり返っている廊下を冬四郎は、足早に歩いていく。少し遅れてついていく西原に並んだむつは、その冬四郎の後ろ姿を不満げに見ていた。仲良いくせに、言いたい事ははっきり言えない兄妹を見て、西原はどっちも不器用で意地っ張りだと思っていた。
冬四郎の後に続いて病院から出ると、冬四郎はすでに駐車場に向かっていた。自分の車の前まで行くと、むつと西原がやってくるのを待っている。それに気付いた2人は、これ以上冬四郎を不機嫌にさせないようにか、ぱたぱたと走って行った。
「…西原君、そこのコンビニで何か買ってきてくれ。飲み物と…こいつ多分何も食ってないだろうから、簡単に食える物も頼むよ」
財布から千円札を何枚か引き抜いて畳んで、西原の方に向けた冬四郎は、さっさと行けと顎をしゃくった。西原は有無を言わずに、それを受け取るとコンビニに向かって駆け出していった。




