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7話
「…失礼しまぁす」
控えめにノックをして少し開けたドアから顔を突っ込んで、挨拶をすると奥のベッドの方から、くすくすと声が聞こえてきた。母親が起きているのだと分かったむつは、ドアを閉めるとベッドの方へと向かった。
「むつ、おかえりなさい」
「ただいまぁ…」
ベッドの横にある椅子には、西原が。ベッドのふちには冬四郎の座っていて、入ってきたむつをじろっと見た。怖いと噂される冬四郎にこんな風に見られると、妹であるむつも流石にたじろぐ。むつが大人しい理由も冬四郎の険しい視線の理由も知っているのか、西原は母親と顔を見合せて笑っている。
「お疲れ、まぁ座れよ」
西原が椅子から立ち上がり、むつに座るようにすすめたが、むつはゆるゆると首を振って断った。




