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6話
信号で止まったむつは、携帯を取り出して誰からの電話なのかを確認した。見てみると、冬四郎からだった。車を拝借しているうえに、黙って酒井に会いに来ている事が知れたのかもしれないと思うと、むつは落ち着かなくなる。
「…お母さんに何かありましたか?」
「え?」
「不安そうに携帯見てるので…何かあったのかと思ったのですが」
冬四郎からの電話だからといって、怒られる事だけが用件ではないだろう。怪我をして入院している母親が、検査を受けている事を思い出したむつは、その事での電話なのかもしれないと思うと、ますます落ち着かなくなった。
「分かりませんが…兄からです」
「どのお兄さんですか?」
「四男です」
「かけ直した方がいいですよ」
「そうさせ貰います」
信号が変わってから、ゆっくりと車を走らせたむつだったが近くにコンビニを見付けると駐車場に入った。そして、すぐに冬四郎に電話をかけ直した。




