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1話
「だよね…」
そうは言っても、不安で仕方ないといったむつの顔を見ながら、冬四郎はどうしたらいいものかと悩んだ。
「…あれだったら京井さんとかに相談してみたらどうだ?谷代君と京井さんに視て貰って何もないって分かれば安心だろ?」
「そっか。そうだよね‼遥和さんなら強いもん、追い払ってくれそう。夕雨さんも居るし大丈夫だね」
「夕雨さん…あぁ、天狗の修行僧か。お前は相変わらず付き合いが広いよな」
「羨ましい?」
「羨ましいな。俺ももっと付き合い広がれば情報を拾いやすくなるんだろうけど…なかなかなぁ」
「対人って難しいもんね。でも、お兄ちゃんの情報網は凄いって先輩が前に言ってたよ?」
「そりゃあ西原君よりは長く働いてるからな」
「それもそっか。さて、アイロン終わったよ」
しっかりとアイロンがけされシワ1つないシャツを、むつは丁寧に畳むと冬四郎の前に置いた。いつの間にかハンカチまでアイロンかげされていて、これでは職場で目敏い奴に何か言われそうな気がしていた。




