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6話
「酒井さん…あの言い方だと、勘違いされる方が出てると思いますよ。それに、兄の事まで言うなんて…」
むつが睨むようにして見ると、酒井は口元に手をあてて、くっくっと肩を揺らして笑っていた。
「すみません。でも、面白かったと思いませんか?あの秘書官の顔…」
「変な噂が広まりますよ?」
「構いませんよ」
あっけらかんとした態度からして、人をからかって面白がる性格だというのがよく分かる。
「…上層部とやらの方々は変なんですね」
「えぇ、宮前さんも含めて変かもしれませんね。宮前さんはでも…いい方です。芯の強い、逆風にも負けない方ですよ」
「兄との付き合いはあるんですか?」
「いいえ、ありませんよ。ただ、噂っていうのは聞こえてくる物ですから。勿論、宮前さん、むつさんにとっては4番目のお兄さんもいい方のようですね。優しい声で淡々と取り調べをするから怖がられてもいるようですが、部下からの信頼は厚いようです」
「…えぇ、どちらの兄も私の自慢ですから」
嬉しそうな笑みを浮かべたむつは、誉められたのが自分ではないが、少しだけ得意気な顔をしていた。




