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6話
「…信じてませんね」
「えぇ。遥和さん…京井さんを見てすぐに、犬神だと気付いてましたし…父のお知り合いという事ですから、私や父と同じような方なんじゃないかと思ったんですが」
「私と犬神さんが知り合いの可能性もありますよ?」
「だとしたら、遥和さんはそう教えてくれます。ましてや、遥和さんが嫌いな相手であれば尚更に。でも、何も言ってませんでしたから」
「…やけに信用されてますね。犬神さんとは、そんなにお付き合い長いんですか?」
「いえ…半年経ったくらいかと…」
「意外と短いですね。それなのに犬神さんの事は信用して、私は信用出来ませんか?」
「出来ません」
悩む事もなくきっぱりと言い切るむつに、酒井は驚いたような顔をした。だが、それと同時に少し悲しそうな顔もしてみせた。
「まぁ私の正体は何であれ、むつさんは来てくださいましたからね。私がお母さんを襲った物と関わりあるかもしれないというのに…そんな疑念はお持ちにならなかったのですか?」
「…そう言われるとそうですね。そこまでは考えてませんでした」




