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6話
火をつけないままだったタバコに、ようやく火をつけた。そして買ったばかりのココアにストローを刺した。甘ったるく、とろっとしたココアは口の中にいつまでも残っている感じがした。ゆっくりタバコを吸って、一息入れたむつは寒そうにしながら車に戻った。そして、すぐに車を走らせると教えられた勤務先へと向かった。
4人のうち2人の兄が警官であり、学生時代に付き合っていた西原も警官。だが、むつはあまり警察組織自体と関わる事がない。その為に、こうして県警本部という場所にも来たのは初めてだった。恐れて多いからか、近くのコインパーキングに車を停めると、そこからは徒歩で向かった。警官たちがうようよと居るはずの場所に、日本刀を持ち込むほどの度胸はなく、勿論の事ながら車に置いてきた。だが、しっかりと分からないように後部座席の方に隠してきた。
門番のように立っている制服警官に見くびられたくないのか、むつは堂々とヒールをかつかつと鳴らして、悠々と歩いていった。




