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1話
2人して食事を済ませ洗い物まで終えると、むつは冬四郎の隣にちょこんっと座った。
「悪いな、何から何まで」
「しばらくお世話になるからね。家事くらいは任せて‼明日はお弁当も作るね」
「…意外と家庭的な事するよな」
「そう?でも、自分でしないとしてくれる人なんて居ないし。お弁当作った方がお財布と身体には優しくない?」
「確かにな。でもうちに弁当箱なんて…」
言いかけて、冬四郎はあっと言った。むつは、何を思っているのか、くすくすと笑っている。
「あるな…お前のが」
「そうなんですよ。やっと使い時が来たね」
「すっかり忘れてたな」
「いいよ、別に。無くても困らないもん。それより…シャツ貸して。適当に取り込んでたでしょ?シワになる‼アイロンかけてあげるから」
「え…あれは形状記憶だし上からジャケット着るから大丈夫だぞ」
「アイロンないの?」
「…ある」
「どこ?もう、シワになってるシャツなんかじゃ格好つかないでしょ?社長でもシャツはぴしってしてるのに」
「お前は母さんか…」
「…お母さんならもっと厳しいと思うよ?冬四郎さん、だらしないですね?って言うと思う」




