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6話
だんだんと明るくなってきて、部屋の中が見えるようになってきた頃、むつはそっと椅子から立ち上がった。カーテンを開けてみると、母親は静かに寝息を立てていた。手を伸ばして額に触れてみると、熱はすっかり下がっているようだった。
「…むつ?」
「ん、まだ早いから…もう少し寝てて」
熟睡は出来ていないのか、母親がうっすらと目を開けたが、むつは布団を少し持ち上げてかけ直してやると、ベッドから離れた。
並んでおいてあるベッドの方には、冬四郎が丸まるようにして寝ている。むつがそうっとその脇を通ろうとすると、くいっとシャツを掴まれた。
「お前、寝てないだろ?少し横になれ」
もそっと起きた冬四郎は、有無を言わせずむつをベッドに座らせた。冬四郎が起きていてくれるならと思ったのか、むつは頷いた。そっと靴を脱いでシャツのボタンを外したむつは、冬四郎と交代でベッドに横になった。ずっと冬四郎が使っていたベッドはまだ温かいうえに、冬四郎の匂いが残っていた。
「…身体を休めるのも大事だからな」
ぼふっと布団をかけられたむつは、もぞもぞと潜り込んですぐに目を閉じた。




