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5話
「…で、西原君。警察の方は?」
「あ、はい。現場検証してもろくに出てきた感じはありませんね。鍵かかってたから、鍵を持ってる人間の仕業じゃないかって。キッチンで包丁調べてましたよ」
むつが疑われている感じに受けたのか、冬四郎はぴくっと頬を痙攣させた。西原もそれには気付いていたが、気付かないふりをしていた。それに、むつへの疑いは、冬四郎と西原という現役の刑事2人がアリバイの証明になる。
「そうか…まぁいい。むつ、酒井さんには電話してみたのか?」
「まだ…警察が引き上げてからお兄ちゃん居る時にって思ったんだけど…流石にこの時間じゃ失礼するぎるから」
「そうだな、まぁそれは仕方ない。明日にでも電話して、何か知ってる事がないか聞いてみてくれ。酒井さんが気を付けろなんて言ったんだとしたら、何かしらは知ってるはずだしな」
「うん」
こくっと頷きながら、むつは冬四郎の落ち着いた姿を見ていた。仕事で一緒になる事も、冬四郎が敵側のような時もあったが、こうして仕事モードの冬四郎をなかなか見る機会がないからか、不思議な物を見ている気がしていた。




