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5話
母親がまたしても喧嘩をしたという原因が、自分にあったと知って膝を抱えて座っていたむつだったが、すぐ近くに居る西原の手から、ペットボトルを引ったくった。
「…お?」
キャップを外して、ごくごくと飲んだむつは、それを西原に突き返した。西原は、何も言わずに受け取るとキャップをした。
ばっと顔を上げたむつは、手の甲で口元をぬぐって、ふんっと息をついた。
「よしっ‼むつが悪くてもお兄ちゃんが悪くてもいいやっ‼むつが犯人捕まえる‼何かもうイライラしてきた‼お兄ちゃん、協力してよねっ」
「…あ、あぁ」
むつの気迫に気圧されているのか、冬四郎は曖昧に返事をして頷いていた。そんな様子を見て、西原はくすっと笑った。母親もうっすらと笑みを浮かべており、西原と目が合うと悪戯っ子のように肩をすくめて見せた。何となく、母親がこういう流れに持っていったような気がした西原は、むつと冬四郎の性格をよく知ってる母親だからこそ、だなと感心していた。




