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1話
むつは冷凍庫の中身を片付けつつ、夕飯の支度をし終えると冬四郎が洗い物をしつつ、それらをタッパーにつめた。その間に、むつは荷造りをした。スーツに下着に部屋着と詰め込んだ鞄は、ぱんぱんになっていた。
「おもっ…こんなに必要か?それに、それ」
ぱんぱんになった鞄を冬四郎は当たり前のように持ち、むつにはタッパーの入った紙袋を持たせた。そして、むつが手にしている細長い棒状の物に、ちらっと視線を向けた。
「しばらく空けるなら持っとかないと」
「…それも、そうだな」
以前、その棒状の物を巡ってむつが誘拐された事などを思い出しているのか、冬四郎は苦々しい顔をしている。だが、それがむつにとって、どれほど大切な物なのかも知っているだけに手元に置いておきたい気持ちもよく分かる。
「さ、帰るぞ。戸締まりしたか?」
「大丈夫」
大丈夫とは言っても心配なのか、むつはもう1度窓の鍵がしまっているかなどを確認して、ぴっちりとカーテンを閉めた。




