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5話
寝室のクローゼットなども丁寧に見て、リビングにやってきたむつは、棚にある引き出しを1つずつ見ていった。
「…貴重品はみんなある」
「それ意外で取られてる物は?下着とか」
「下着?えー?」
そこまで見るのか、と思いつつむつは部屋に引き返してクローゼットの中にあるカラーボックスをあけた。特に漁られている感じはなく、着る物に手をつけられている様子はない。
「ある」
「そっか。なら良かった」
心底安心したような西原の声に、むつは首を傾げた。そもそも、母親を襲ってまで下着を盗むような者など、いないんじゃないかとむつは思っていた。
「特に盗られた物はないって事か?」
「…そうみたいね。物取りじゃないって事なんじゃないかな…ん?」
リビングに戻ってきたむつは、西原と他の刑事たちに報告をしながら部屋を見渡した。そして、何か違和感でも感じたのか、口を閉じた。




