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5話
外に出たむつは、西原の横にぴったりとくっつくようにして立ち、玄関を出入りする警察関係者を見ていた。
「…また引っ越そうかな」
「この前、引っ越してきたばかりなのにな」
「だって、知らない人がいっぱい出入りして…もうあたしの場所じゃない気がしてきてさ」
「汚された感じか?」
「そんな感じ…むかつくから絶対に犯人許さん。お兄ちゃんにも警察にも渡さない」
「…人じゃないなら、お前に任せるけど、人だったらこっちに渡せよ?」
「勿論。お兄ちゃんの手柄にして貰うわよ」
「お前も静かに怒ってるな」
廊下で壁にもたれたむつは、やる事がないからか鞄から出したタバコに火をつけた。携帯灰皿を片手にタバコを吸う姿は、被害者の身内とは思えないくらいに威圧的でもあった。




