272/1084
5話
「それで…お前、何で可能性として、お母さんを襲ったのは人じゃないかもって言ったんだ?宮前さんも最初からその可能性を含めてたみたいだったけど」
「酒井さんに、変なのが近くにいるから気を付けろって言われたの。しかも、能力が使えない事も知られてた」
「…何者なんだ、その人」
「酒井理人警視正って程度しか知らない」
「ふぅん…あんまり会話をしなかったんだな?初対面なら、相手を知ろうとして色々聞くもんなのに」
「聞かなかった…」
色々と酒井本人について、たずねておけば良かったと今になって思うのか、むつは溜め息を漏らした。そして、買ってきていた紅茶をのキャップをようやく開けると、ゆっくり舐めるように飲んだ。
「でも、悪い人には思えなかったのよね」
「それって、あれじゃないのか?お父さんの知り合いだからってのもあってだろ。お父さんの事信用してるなら、お父さんの知り合いは悪い人じゃないみたいなさ。ついでに言えば、警視正っていう肩書きもあるしな。お前のお兄さんにも警視正がいるし」
「…否定できないわね」




