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1話
「あのね、お兄ちゃんが下でインターフォン鳴らしたでしょ?でね、その後すぐに玄関が開く音がして…お兄ちゃんかと思ったんだけど早すぎるし、一言も声かけてくれなかったし…絶対にお兄ちゃんじゃないって思って…でも…見に行く勇気もなかったし…だから、顔とか見てないけど、誰か来たの」
「不審者に入られたのか…」
だが、冬四郎は誰ともすれ違ってない。それを再び言って、むつの気のせいだろと片付けるのは簡単な事だ。でも、冬四郎にはそれが出来なかった。キッチンに居たむつは、明らかに怯え身動き取れずに立ち尽くしていたのだ。
「そうか。でも、むつが不審者と鉢合わせる事なくて良かった。顔見てないなら怪我とかもしてないだろ?」
「うん…」
「なら、良い。顔色よくないな…今日はどうする?うちに来るか?ここじゃゆっくり寝れないだろ?しばらくうちに居てもいいしな…っても、あ…ちょっと部屋散らかってるな」
「しばらく…泊まってもいい?」
弱々しいむつの声に、冬四郎はどうしてやれる事もなく、ただ頷くだけだった。




