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5話
車に乗り込む前に、自動販売機に立ち寄ったむつは、買ったコーヒーを西原に渡した。
「お、ありがと」
「うん…」
ぼすっとシートにもたれたむつからは、先程見せた笑みはすっかりと消えていた。むつも冬四郎同様に、落ち着きを取り戻すと、今度は怒りがわいてくるのか、その横顔は険しい。似てない兄妹のむつと冬四郎だが、そんな顔をするとやはり兄妹なんだな、と西原は思った。
「なぁ…俺にとっては聞きにくい事だしお前にとっては話にくい事だと思うけど。むつと宮前さんって…義兄弟なんだよな?」
貰ったコーヒーを開けて、ぐびぐびと飲んだ西原は、続けてタバコを取り出すとくわえて、火をつけた。それを見てか、むつは少しだけ窓を開けた。
「…今更?」
「今更。俺はちゃんと聞いた事ないからな」




