5話
熱を計って、聴診器で心音を確認して、血圧を計って、藤原からの問診にも母親はしっかりと答えている。むつは大丈夫だと思ったのか、ほうっと息をついて、診察をじっと見守っていた。
一通りの診察をして、藤原は母親の手を取ると病院服の袖を少しまくった。そこには包帯が巻いてあるだけで、それをちらっと見ただけで藤原は、何も言わなかった。
「…少し熱がありますが、それ以外は今の所は問題ありませんよ。明日は念のために検査しますので、今夜はこのままお泊まりください」
「分かりました。お世話になります」
「いえ、いえ、こちらこそですから。むつさんには学生の頃からお世話になってます…あ、申し遅れましたが藤原と申します。よろしくお願いします…さて、と」
さっと挨拶をした藤原は、立ち上がるとカーテンを開けた。そして、部屋の隅に立っている冬四郎を呼んだ。
「お母さんは大丈夫ですよ。少し熱がありますが、それは問題ありませんのでご心配なさらないでください。明日は精密検査するので、このまま入院という事で…むつさんも泊まりますか?」
「泊まる、泊まる‼」
「…言うと思ってた。後で簡易ベッド運ばせるから、それ使ってください。と、まぁ…私からは特にご報告する事はないですが…何かありますか?」




