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5話
「…冬四郎さん」
はっとしたように、むつはベッドの方を向いた。そして、手をついて母親を見た。母親は、いつから目を覚ましていたのか、うっすらと笑みを浮かべていた。
「頼もしくなりましたね」
「おっ、お母さんっ‼」
「むつも…来てくれたのね」
母親が目を覚ましたからか、冬四郎はベッドの脇にあるナースコールを押そうとしたが、母親は手を伸ばしてそれを止めさせた。そして、ゆっくりと身体を起こした。
「母さん?」
「警察が入るでしょう?きっと、すぐに…その前に、冬四郎さんとむつには話をしておかないと」
「犯人見てるの!?」
むつが今すぐにでも聞きたいと言わんばかりの勢いを見せると、冬四郎はむつの肩を掴んで落ち着かせた。
「…ここは、むつの知り合いの病院だから、先に診察して貰おう。警察には、まだ入れないって言っておいて貰えばいい…なんなら、明日にでもすればいいから。とりあえず、診察を」
「冬四郎さんがそう言うなら…」
母親は冬四郎の腕から手を離して、頷いた。




