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5話
「そうなんだ…お母さん、まだ1回も目覚ましてないの?」
「あぁ…」
部屋に入った時すでに、意識を失っていた母親だったが、病院に運ばれてからもまだ目を覚ましていないと聞くと、やはり不安になるようで、むつは眉尻を下げた。だが、泣きそうな顔ではない。
「そう…でも無事なら…とりあえずは…」
むつはベッドのわきにある丸椅子にちょこんっと座ると、母親の顔を見た。酸素マスクがつけられているでもなく、今は穏やかな寝息を立てているだけのようだ。
「…ねぇ、やっぱり警察入るの?」
「入る」
きっぱりと答えた冬四郎は、むつの隣に立った。冬四郎の顔は、むつからは見えないが横顔を見ている西原は、その横顔がぞっとするくらいに恐ろしい事に気付いていた。むつは動転していた程度だったが、刑事としても現場を見ている冬四郎はやはり何か他の事にも気付いているのだろう。




