248/1084
4話
「ごめんな、ちょっと強かったか?」
「ん…でも、お兄ちゃんのが痛いかも」
西原が自分が叩いた方の頬に手を伸ばすと、むつはそろそろと手を下ろした。血の気がなくなったように、白くなっている肌は赤くなっていて、見るからに痛そうだった。
それを見ると、申し訳ない気持ちになり、西原は頬を優しく撫でた。それが心地いいのか、むつは目を閉じている。しっとりと濡れている睫毛といい、薄く開いている唇といい、不謹慎だが、ドキドキとさせられる。
冬四郎から任されているのだから、ここで変な行動に出るわけにはいかない。それこそ、不謹慎だ、と西原は自分に言い聞かせたが、それは簡単に砕かれてしまいそうな決意だった。




