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4話
「お、お兄ちゃんっ…」
「西原君、迂回して渋滞から抜けて高速に乗れ」
「はい」
冬四郎は携帯をむつに返すと、西原に指示を出した。西原はすでに、その指示が飛んでくるのを予想していたかのように、渋滞から抜けるべく横道に入った。やや強引な車線変更で、後続の車からクラクションを鳴らされたが、事故に繋がったわけではないから気にしていない様子だった。
「何かあったみたいだな」
「…悲鳴みたいなのが…それに、どさってゆ、床に落ちたみたいな音して」
「分かった。いいから落ち着け。後、危ないから前向いて座りなさい。シートベルトもつけろ」
「う、うん…」
むつは言われた通りに座わり、シートベルトをつけようとしたが焦るのか、上手くつけれない。運転している西原が手を伸ばして、かちっとシートベルトをはめてやると、むつは礼を言った。




