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4話
窓から顔を出して、ぼんやりとしていたむつだったが、鞄の中に入れてある携帯が鳴ると、ぱっと顔を引っ込めて鞄に手を突っ込んだ。
「あっ、お母さんだ…何だろ?もしもーし?」
『……っ‼……』
「お母さん?なーにー?」
『…あぁっ‼』
「お母さんっ!?」
『む、つ…誰かが…』
「お母さんっ‼お母さんっ‼」
母親の途切れ途切れの声と、悲鳴のような声に、ばたんっと何かが落ちるような音が聞こえた。むつは、シートベルトを外すと、ばっと振り向いた。
「お、お母さんが…」
「貸せ‼」
冬四郎は、むつの手から携帯を奪うと耳にあてた。冬四郎はむつの様に大きな声は出さないが、やはり焦りの含んだような声で、電話越しに母親を呼んだ。




